人生で多くの時間を費やす「仕事」の時間。生活に影響が大きいため、できればブラックな環境で働くのは避けたいですよね。
転職活動や就職活動をしていると、企業の情報をインターネットやSNSなどで調べる機会も多いと思います。しかし、本当にブラック企業なのかどうかをWebサイトやSNSに書かれている情報だけで見分けられる人は少ないのではないでしょうか?
「ネットの口コミ情報に悪評が多いけど、大丈夫かな…」
「面接が高圧的に感じる…」
「入社してからブラック企業だと分かったらどうしよう…」
転職・就職活動をしていると、このような不安を生じることもありますよね。
また、実際に働いている会社が、他の企業と比べて気になる点が多く「もしかして、勤め先はブラック企業なのでは?」と思うこともあるかもしれません。
本記事では、このような悩みをお持ちの人に向けて「ブラック企業の特徴」「求人情報や採用試験でのブラック企業の見分け方」などをお話していきます。
ブラック企業に入社してしまう可能性を下げ、会社や仕事に対してストレスのない充実した毎日を送れる助けになるとうれしいです。
モラルがなく人に冷たいブラック企業
ブラック企業とは、企業のコンプライアンス意識が低い企業を指す言葉です。
たとえば、賃金未払いや極端な時間外労働やノルマを課したり、パワハラが横行していたりといったことが挙げられます。
ブラック企業に明確な定義はなく、厚生労働省はブラック企業とは呼称せず、「若者の使い捨てが疑われる企業等」としています。
何をもってブラック企業とするかは人それぞれですが、ブラック企業の厄介な点は「入社してからでないと分からない」ことでしょう。
実際に働いてみると求人票に記載してある仕事内容と全然違う、面接時に言っていたことと条件が異なる……皆さんもこういった話を聞いたことがあるのではないでしょうか。
では、具体的にどのような特徴がブラック企業にはあるのでしょう。働いていると気付かないものもあるため、確認してみてください。
次の章では、ブラック企業に関する具体的な話をしていきます。
ブラック企業と呼ばれる企業の特徴
ブラック企業と呼ばれている企業には、それなりの理由があります。
いくつか例を挙げると、下記のようなものがあります。
- 特徴1. 記録されていない残業時間がある
- 特徴2. 休日対応などが必要
- 特徴3. 前任者がすでに退職している
- 特徴4. 社内行事の頻度
それぞれなぜブラック企業の特徴になるのでしょうか、一つずつ解説いたします。
特徴1. 記録されていない残業時間がある
一般的な企業では、従業員の労働時間を勤怠システムやタイムカードなどで記録をし、労働時間数を管理します。しかし、ブラック企業はタイムカードを打刻する前、または打刻したあとの労働が日常的に発生しているケースがあります。
記録に残らない勤務は、「サービス早出」「サービス残業」と言われるものです。
企業側が強制したり強要したりは当然違法になりますが、従業員の自主的なサービス早出、サービス残業も違法になるため、企業にとっても注意が必要です。
どちらにせよ、従業員がサービス早出やサービス残業をしているのを見抜けなかったり、黙認していたりするのは、上司/上長の管理不行き届きです。
そのため記録されていない残業時間がある企業は、ブラック企業と捉えられても仕方がありません。
特徴2. 休日対応などが必要
休日に連絡が頻繁に入るような企業も、ブラック企業の特徴に当てはまります。
どうしても対応が必要になってしまう場合もあるかと思いますが、「休日に連絡をしてまで伝える内容か?」と思ってしまうような内容がある場合は注意が必要。
たとえば、休日に連絡が入り、何かと思ったら「出勤したら〇〇の対応をお願いします」などは、休みの日にわざわざ連絡をする必要性は薄いでしょう。1日のうちの数分間だったとしても、仕事の連絡が入るのは精神的に負担に感じてしまうものです。
上記の「出勤したら〇〇をお願いします」なども、業務上の必要な指示ということになれば、休日労働と捉えられてもおかしくはありません。連絡をする側が連絡を受ける側の心理や状況を想像できないのは、ブラック企業の特徴といえるかもしれません。
特徴3. 前任者がすでに退職している
転勤や部署異動などで、仕事内容を1から覚えなくてはいけない場面もあります。そういったとき、前任者がすでに退職をしている企業は要注意です。
なぜなら、引継ぎの期間すら「出勤をしたくない」「働きたくない」と思うほどの環境だったかもしれないからです。
また、前任者がいないということは、誰からも業務内容を教わらずに仕事をすることになります。
転勤や部署異動などが発生すれば、同じ会社でも仕事内容はまったくの別物です。業務の引継ぎがなく実務に入るのは、ルールが分からないままはじめるサッカーのようなもの。一般的に考えれば辛い状況ですよね。
前任者がいない場合、部署の役職者や先輩などが業務に関することを引き継いでくれると思いますが、業務知識や経験がないケースも少なくありません。
そうなると、誰も仕事を進める上での正しい方法や、効率の良い方法を知らない状態になるため、人によっては大きな精神的なストレスになってしまいます。
特徴4. 社内行事の頻度
社内行事は、企業にとってはアピールになります。しかし、求人サイトなどに社内行事の写真を掲載している場合、ブラック企業かもしれないと構えておきましょう。
社内行事を行っている企業のなかには、強制ではないとしながらも、実質的には強制のようになっていることもあります。毎月必ず1回は社内行事があったりすると、休日日数が毎月少なくなるのと同じ意味です。
また、社員同士の一体感を演出しているような写真の場合はさらに注意です。仲の良さをはき違えてプライベートに踏み込んでくるようなこともあるかもしれません。また、やりがい搾取としてパーティーなどが多く開催される一方、ボーナスが少ないなどといったこともあるでしょう。
求人サイトなどに社内行事を目立たせている企業は、少し注意をしたほうが良いかもしれません。
求人情報でブラック企業を見分けるコツ
ブラック企業の特徴をお話してきましたが、特徴が分かっても求人情報から特徴を見分けられなければ意味がありません。
求人情報でブラック企業を見抜くコツはあるのでしょうか?
ブラック企業を求人情報で見抜くコツは、離職率、平均年齢、「夢・希望」などのワードにあります。それぞれの内容を解説していきます。
ブラック企業を見分けるコツ1. 離職率から見分ける
求人情報でブラック企業かどうか見分けるコツは、企業の離職率に注目すること。
厚生労働省の令和2年雇用動向調査結果の概況によると、令和2年1年間の入職者数が約710万人、離職者数が約727万人になっています。
上記の数字から一般労働者(パートタイム以外の労働者)の離職率は10.7%、パートタイム労働者の離職率は23.3%、合計すると14.2%が令和2年の離職率になります。
※出典:令和2年雇用動向調査結果の概要
現在勤めている企業、または志望する企業の離職率が上記の数字を上回っている場合、人が辞めやすい企業と思われます。
求人サイトや企業のWebサイトに離職率を掲載している企業は、恐らく上記の数値よりも低い場合が多いでしょう。なぜなら、離職率は企業が人を大事にしているかを計る重要な指標の1つで、離職率が低いのは求職者に対して強いアピール材料になるからです。
離職率を掲載していない企業の場合、離職率を調べる方法は複数あります。
離職率を調べる方法1:企業の人事担当者に直接聞く
最も確実な方法は、企業や人事担当者に直接聞いてみることですが、聞き方やタイミングによっては失礼な質問になってしまうため、注意が必要です。
おすすめは、企業の代表連絡先メールアドレスなどに応募前に匿名の状態で聞いてみること。応募前の段階のため、個人情報を企業に知らせることがないため、心理的にも聞きやすいと思います。
「離職率はどれぐらいですか?」といった聞き方では、少し直接的すぎる印象があるため、募集背景や毎年何名ぐらいが入社しているのか、など、言い方を変えて聞いてみるのが効果的です。
こちらの方法は企業離職率を調べるのにも役立ちますが、企業の対応を見る際にも効果的です。質問に対しての返答が遅かったり、雑だったりする場合、入社してからも同じような対応をされる可能性があるかもしれません。
離職率を調べる方法2: 口コミサイトやSNSの活用
企業の口コミサイトやSNSを活用する方法もあります。
ただし、口コミサイトやSNSは匿名性が高いため、情報をすべて鵜呑みにしないようにしましょう。また、書かれている口コミ数などによっては、データとしてのサンプル数が少なすぎる場合もあるため、あくまでも「参考情報」として見るのをおすすめします。
口コミサイトやSNSの情報と、企業が発信している情報、求人サイトに掲載されている情報など、すべてを照らし合わせて共通している部分に注目してみると分かりやすいかもしれません。
正確な離職率を計る方法ではありませんが、企業文化や実際の残業時間、離職理由などを調べるにはおすすめの方法です。
ブラック企業を見分けるコツ2. やりがい搾取
「やりがい搾取」という言葉をご存知でしょうか?
仕事のやりがいや、社会的貢献度の高い仕事など、「やりがい」のある仕事という耳馴染みの良い言葉で、労働者のやりがいを利用して、長時間労働、低賃金での労働をさせ利益を搾取する行為を指すのが「やりがい搾取」です。
ほかにも、「お客様のため」「将来のため」といったワードが出る場合も注意が必要です。「〇〇のため」という大義名分を振りかざして、従業員のことを二の次にしている場合があるからです。
やりがい搾取がエスカレートしていくと「お客様のためなら、休日も返上して働くべきだ」「将来のために、いま無理に残業してでも経験を積んでおくべきだ」といった考えにまで発展しかねません。
そのため、求人情報にやりがい搾取を感じられるような文言を見かけた場合は、ブラック企業かどうかを注意して見る必要があります。
ブラック企業を見分けるコツ3. 年中求人サイトに掲載されている
いつ見ても求人情報が掲載されている企業、ありますよね。長期間掲載しているのは
- 業績好調による増員
- 人が集まらないから
- 離職率が高い
が、考えられます。
「業績好調による増員」であれば喜ばしい理由です。また「人が集まらないから」の場合は、求人票が魅力的なアピールになっていなかったり、ターゲット層にリーチできていなかったりして、求人情報を長期間掲載されているケースも考えられます。
問題なのは最後の「離職率が高い」場合です。新卒、中途で人員を補充しても、補充人員を上回る速度で人が離職していくため、年中求人サイトに求人情報を掲載せざるを得ないことが考えられます。
採用試験でブラック企業を見分けるコツ
一般的な就職、転職活動では書類選考→面接選考→内定→入社のフローで選考活動が進んでいきます。
本項目では書類選考、面接選考などの採用試験でブラック企業を見分けるコツをお話していきます。
採用試験でブラック企業を見分けるコツ1. 返事が遅い
就職、転職活動をしている人にとって、採用試験の合否連絡はできるだけ早く欲しいと思いますよね。
しかし、人によっては書類選考や面接選考を受けたあと、合否連絡が一向に届かないというケースがあります。1週間ならまだしも、書類選考に2週間、企業によっては1ヶ月近くかかるケースもあります。
企業の連絡が遅くなる原因はいくつか考えられますが、連絡を待っている身としては「大事にされていない」と感じてしまうのではないでしょうか。
人手不足などで連絡が遅くなってしまっていたり、他の候補者との比較検討をしていたりなど、さまざまな理由はあると思いますが、連絡が遅くなるなら事前に連絡を入れておくなどの対応がないのは、「ひょっとするとブラック企業なのでは?」と疑うに足る理由になります。
どういった理由があるにせよ、連絡が遅いという事実は「人を大事にしない」ブラック企業につながる要素です。
採用試験でブラック企業を見分けるコツ2. 面接選考の内容
面接選考の内容からもブラック企業か見分けるコツがあります。代表的な見分け方は「圧迫面接」です。
圧迫面接は威圧的な態度を取る、求職者の意見や考えをすべて否定するなど、面接官が理不尽な態度で面接を行うことです。
圧迫面接は賛否両論ある話題ですが、圧迫面接を肯定する意見に「入社する前に本当の職場の雰囲気を知ることができる」という意見があります。この言葉通りだとすれば、日常的に圧迫的な雰囲気や仕事内容があると受け取ることもできます。
精神的なストレスがかかりやすい職場である可能性が高く、圧迫面接を行う企業はブラック企業である可能性があります。
採用試験でブラック企業を見分けるコツ3. 社員に覇気がない
採用試験が進んでいくと、志望企業に直接訪問をする場面も出てきます。訪問時にこそ、ブラック企業かどうかを見分ける大きなポイントがあります。それは社員に「覇気があるか」を見ることです。
ブラック企業の社員は、長時間労働などにより疲れ果ててしまっていたり、先述した圧迫的な雰囲気を日常的に受けていたり、とにかく「元気がない」「笑顔がない」特徴があります。
すれ違う際や帰り際など、社員の雰囲気を観察してみましょう。言葉では形容し難いのですが、重い雰囲気、緊迫した雰囲気といった印象を受けたら、注意が必要です。
採用試験でブラック企業を見分けるコツ4. 求人票の条件とかけ離れている
ブラック企業の特徴に、求人票に良いことばかり掲載しているといった特徴があります。
たとえば求人票には雇用形態は正社員と記載してあるのに、面接で話を聞いてみると「全国転勤ができない場合は契約社員になる」などです。ほかにも「試用期間中の雇用形態に変動なし」と記載してあったのに実際は変動するなどもあります。
入社してから求人票と実際の労働条件に大きな違いに気付いた場合、求職者にとって計り知れない大きなリスクがあります。
それは「短期離職」です。転職が一般的になってきたとはいえ、多くの企業が求める人物像は、「熱意・意欲」「協調性」がある人物です。
短期離職に明確な定義はなく、企業によって解釈は変わりますが概ね1年~3年以内を短期離職としている企業が多いです。入社してから条件面や、聞いていた話と違ったなどの理由で短期離職をしてしまった場合でも、短期離職であることに変わりはなく「そのあとの転職活動に大きな影響」があります。
多くの企業が求める「熱意・意欲」「協調性」がある人物は、短期離職をしないものと考えられてしまうのです。この短期離職になる可能性が高いことが、ブラック企業に入社することのリスクです。
いま働いている企業がブラック企業かな?と思ったときにとるべき行動3選
いま働いている企業がブラック企業かも…と思ったときに取るべき行動3つを紹介します。
基本的には誰かに相談をすること、またその環境から離れるようにすることが大切です。精神的や肉体的な限界を迎える前に、ブラック企業から抜け出すようにしましょう。
産業医・身近な人に相談する
仕事や会社での人間関係の悩みなどがある場合、産業医に相談をしてみましょう。
産業医は、常時使用する従業員数が50人以上の事業場に設置義務が課せられています。そのため、産業医がいない企業もあるでしょう。そういったときは、産業医でなくても上司や先輩、同僚、後輩、社外の人でも構いません。誰かに相談をするのがとても大切です。
「相談をする」というシンプルな提案ですが、意外とできない人が多いのも事実です。
相談をしない背景は、男女別で理由が異なっていて男性の場合は「相談するほどのことではない」、女性の場合は「自分が我慢すれば良い」と考える人が多いようです。しかし、相談をすることで気分が楽になったり、自分の価値を認識して孤独感がなくなったりなど、いくつもの効果があります。
1人では解決できないと思うようなことでも、誰かに相談をすれば新しいアイデアや協力者を得られるかもしれません。相談をすることを恥ずかしいと思わず、積極的に相談をするようにしましょう。
第三者機関を利用する
自分だけでは解決できない、周りに相談ができる人もいない場合、第三者機関を利用する方法があります。
ブラック企業の諸問題に関する相談窓口は、以下の窓口があります。
相談窓口 | 相談内容 |
---|---|
労働基準監督署 | 労働基準法違反など |
労働局 | 労働問題、ハラスメントなど |
労働条件相談ほっとライン | 労働条件など |
弁護士 | 残業代、損害賠償など |
法テラス | 何を相談したら良いのかわからない場合 |
それぞれの窓口には相談内容によって向き不向きがあります。
例えば、労働基準監督署は労働基準法に則り、違反が疑われる企業に対して必要な調査を行い、違反行為が明らかになった場合、是正勧告などを行います。しかし、ハラスメントに関する問題や労働紛争などに介入することができません。
自分が置かれている状況や問題が、どの窓口に該当するのか分からない場合は、法テラスに相談をしてみるのが良いでしょう。法テラスは、政府が全額出資をした公的な独立行政法人に準じた枠組みで作られています。
法テラスは、原則的に、同一の相談内容を3回まで無料で利用することができ、利用者の問合せ内容に応じて、法制度に関する情報、相談機関、相談団体に関する情報を提供しています。
いま働いている企業がブラック企業かと思ったとき、こういった第三者機関の利用を積極的に検討しましょう。
こっそり転職活動をする
短期離職のリスクについてお話をしましたが、短期離職になってしまうと、精神的、肉体的な負担が大きい場合、退職をしてブラック企業から抜け出す行動、つまり転職を検討することも大切です。
転職活動は短期離職によるリスクを下げるほか、金銭的な余裕を持って活動ができるよう、在職中に転職活動をすることをおすすめします。
しかし「どうしても無理、耐えられない」と感じるなら、一刻も早くブラック企業から抜け出したほうが良い場合もあります。体も心も壊してしまっては元も子もありません。
企業にとって、あなたの代わりになる人はいるかもしれませんが、あなたの人生の代わりになれる人は存在しません。いま働いている企業がブラック企業かもしれないと思ったとき、「自分の人生の代わりになる人はいない」ということを、行動の軸にしてみてください。
転職活動を行う場合は、効率的かつ転職の成功率を上げるため、転職エージェントを利用すると良いでしょう。求人の検索を代わりに行ってくれるほか、履歴書・職務経歴書の添削サポート、面接対策、企業情報の共有などを、無料で利用できます。転職エージェントの具体的な活用法については、次の記事も参照ください。
仕事をしながら転職活動をすると、さまざまな調整・交渉事項が出てきます。例えば、面接スケジュールの調整、希望条件の調整、入社月の調整、給与交渉などです。
志望企業に対して面と向かって言いづらい給与面や休日・休暇のことも、転職エージェントに一任して希望条件に沿う形で調整をしてもらうことが可能です。
まとめ
ブラック企業の特徴や見分け方などをお話してきました。
何を基準にしてブラック企業にするかは、人の感じ方など相対評価ではなく、サービス残業や最低賃金の遵守や、未払い残業がないかなどの観点に着目してください。
ブラック企業に入社をする前に見分けるのが一番ですが、現在すでにブラック企業に属している場合、精神的・肉体的な限界が来る前に誰かに相談をする、転職を検討するのが重要です。