あなたはいまの職場で「市場価値を意識しろ」「市場価値を高める努力をしろ」と言われたことはないだろうか。あるいは転職を検討しはじめた際「市場価値が重要だ」「この職種は今後、市場価値が上がりそうだ」といった言葉を聞かれたこともあるかもしれない。
幸か不幸か、筆者はその種の言葉を何度も聞かされてきた。そもそも、人事評価において給与改定が行われる際、最も重要な基準の一つとして「市場価値」が設定されている。
自然と「市場価値って、いったい何なんだろう?」「市場価値を上げるために、具体的にどんなことをすればいいんだろうか?」と考えるようになった。そしていま「市場価値を意識して働くことは、自分をより自由にしてくれることになる」と心の底から感じている。
市場価値を高めることは、いまの仕事での待遇を上げることに直結するだけではなく、今後のキャリアプランを設計するうえでも重要だ。ひいては、自分の生活をより安定させ、より自分らしい生活を送ることにもつながる。
この記事では、市場価値とはそもそも何なのか、その構成要素を分解して解説し、まずは自分の市場価値の測り方、調査方法まで紹介していく。
役に立ちそうな部分を、積極的に採り入れていただければ幸いだ。
また特に転職市場での価値の決まり方、転職するうえでの市場価値の上げ方については次の記事で解説しているので、転職を検討しているのであればそちらも参考にしてほしい。
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市場価値を構成する要素
前提として、市場価値の定義を確認しておきたい。端的にいえば市場価値とは「労働市場における労働者の価値=価格」になる。単純に「年収」と理解しても問題ないだろう。
労働市場一般において自分はどれだけの価格=年収をつけられるのか、その相場価格が「市場価値」と呼ばれるものの正体だ。
ただ、これだけでは市場価値がどのように決まるのかわからない。市場価値を決める要素を見ていくことにしよう。
市場価値を決める要因としては「属人的な要素」と「外部環境要因」の2つがある。まずは個人の努力で向上させることが期待できる属人的な要素をみていこう。
市場価値を左右する属人的な要素
市場価値を左右する属人亭な要素として挙げられるのは、次の3つだ。
- 汎用性の高い思考・知識と行動特性
- 職種に応じた知識とスキル
- 経験・実績
それぞれ補足的に解説していく。
汎用性の高い思考・知識と行動特性
まずは「汎用性の高い思考と行動特性」が挙げられる。
「汎用性が高い思考・知識」というのは、学生まででいえば「基礎学力」「一般教養」が当てはまるだろうし、また社会人以降身につけることが期待される「クリティカル・シンキング」「ロジカル・シンキング」、あるいはSWOT分析、3C分析といったマーケティングで使われるフレームワークの知識がそれにあたる。
行動特性は「協調性」「リーダーシップ」「忍耐力」「ムードメーカー」といった、本人の仕事において向き合う姿勢を指す。必ずしも定量的に測れるものではないものの、望ましい行動特性、もしくはある業界/会社においてマッチする行動特性は確実に存在する。
職種に関わらず「知っておくべき知識」「望ましい行動要件」を身につけておく、それを身につけたうえで経験を言語化できる人間は市場価値が高いといえるだろう。
職種に応じた知識とスキル
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2番めの要素としては、職種に特化した「知識とスキル」だ。
上で解説した「汎用性の高い思考・知識と行動特性」がジェネラリストに求められるものだとすれば、こちらはスペシャリストの側面から評価される指標になるだろう。
エンジニアであればプログラミング言語を多く知り、最適な言語を選ぶ能力があることだったりもするだろう。デザイナーであればデザイン力の高さはもちろん、扱えるソフトウェアが豊富といったこともこれにあたる。
職種として求められる高いスキルと知識を磨いていくことで、当然ながら市場価値は上がる。
経験・実績
最後は「経験と実績」だ。
これまでに解説してきた指標は「知識・スキル・行動上の特徴」といったもので、それは必ずしも実務と結びつくものではない。
ただ転職市場で評価されるのは、そのような知識・スキルなどを活かして、どのような経験をしてきたか、どのように成果を上げてきたのか示すことができる人材だ。経験と実績がなければ、同様の経験と実績を上げてくれるのか疑わしい。
市場が求めているのは、自分の能力を活かして成果を上げ、さらにそれを再現できる人間である。
またプロジェクトマネジメントを行った経験、人材育成に携わった経験も市場価値のプラス要因として機能する。
市場価値に影響を与える外部要因
ここからは主に外部環境による市場価値の影響についてみていきたい。
「とりあえず頑張ってスキルを獲得すれば評価されるはずだ」「経験を積めば、それだけ年収が上がる」と単純に思い込むのは危険だ。
もちろん努力によって市場価値を上げることはできるだろう(少なくともまったく努力しないよりは、ずっと)。
ただ変わりゆく外部環境を無視していては、効率的に市場価値を上げることは難しい。それどころか「いくら頑張っても報われない」といった事態に陥らないとも限らない。
市場価値を上げたいと考えている方は、ぜひ参考にしてほしい。
労働需要
最も重要なことは、いまの労働市場−−ひいては将来の労働市場において、あなたのスキルや経験にどれだけの需要があるかどうかだ。
「あなたの仕事は、AIに取って替わられないか」
「これからあなたの仕事は、労働市場で増えていく見込みはあるか」
「あなたを欲しがる会社は、いまだいたいどれくらいあるだろうか」
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上記の質問に対して正確に答えられなくても、上のような質問を自分自身に投げかけたことがあるだろうか?
これから衰退していく職種、求められることが少なくなっていく職種は間違いなくある。
木こりのスキルを高め、木こりに関する知識を数多く有し、木こり歴20年の猛者だとしても、木こりという職業が消滅すれば木こりの市場価値もまた雲散霧消する。
まずはあなたの仕事の10年先を想像してみよう。
代替不可能性/稀少性
もう一つの側面。たとえ労働需要が大きくても、供給もまた多ければ市場価値はそこまで上がることはない。
逆に「取り替えがなかなか効かない」「稀少性の高い」人材になることで市場価値は爆発的に上がる。
具体的にいえば「業界のなかでは知らない人がいないほど、スキルを磨きあげる」といったスキル・知識の深化、あるいは「ゼロから事業責任者として事業を立ち上げた」といった貴重な経験によって市場価値向上が見込まれる。
さらに「スキルの掛け合わせ」も稀少性を生み出す有効な方法だ。たとえば「デザインができる人間」だけならいくらでもいる。だがそこに「マーケティングの知識を持ち合わせている」といった条件を加えると、その人数は一気に激減する。さらに「データ分析スキル」を組み合わせると稀少性は一気に高まるだろう。
一つひとつのスキルはありふれたものであっても、その近接領域のスキルをかけ合わせることで、取り替えのきかない人材として重宝されるだろう。
以上が、市場価値を構成する要素である。次に、改めて市場価値を上げておくことのメリットをおさえていこう。
市場価値を高めることのメリット
市場価値を上げることのメリットは単純に「年収が上がるから」だけではない(もちろん、それもある)。
最も大きなメリットは「より自由を獲得できること」だ。少し噛み砕いて解説していきたい。
いまの職場での待遇を上げることができる
近年、年功序列の評価制度はますます廃れている。そして、今後も終身雇用とあわせて年功序列の制度はなしくずしに崩壊していくことが予想される。
人事評価は、より業績・スキルが重要視されるようになってくるだろう。加えて市場価値を基準として評価・給与が決まる会社も増えていくだろう。ある意味、もっともフェアな評価は「労働市場での相場」だからだ。
市場価値より低い評価をつけられた者は、じきに会社を離れるだろう。つまり市場価値から乖離した評価を下す会社の人材はどんどん流出する。会社としても市場に基づいた評価を提示する必要性が高いのである。
自分の市場価値を把握しておけば、その基準をもとに給与交渉をすることができる。市場価値を上げておくのは、現職での待遇を上げる最も有効な方法の一つだ。
それでも待遇が上がらないなら? 自分を適正に評価してくれる会社に転職すればいいだけの話だ。
高い市場価値を持っていれば、現職に縛られる必要がなくなる。働く先、働き方をより自由に選べるのが市場価値を高めておくことの最高のメリットだ。
転職で条件の良いオファーを受けることができる
市場価値を高めておけば、当然ながら転職においても条件の良いオファーを受けることができる。待遇が上がるというのは給与はもちろん、それ以外の要素も大きい。
- よりレベルの高い仕事をすることでスキルが高まる
- 仕事の領域を広げることができる
- 人材育成・マネジメント業務に携わることができる
「仕事の報酬は仕事」という言葉がある。しっかりと市場価値を高め、よりよい待遇を求めることで、やりがいのある仕事に携われる可能性が高い。
そのことで、さらに市場価値を上げるチャンスを掴むという好循環に移行できる。給与はもちろん、それ以上の価値を獲得するためにも、市場価値を高めておくことをおすすめしたい。
自分の市場価値を測るための方法
ここまで市場価値を構成する要素、そして市場価値を高めることで得られるメリットについてみてきた。ただ、実際の「自分の市場価値」をどこまで把握しているだろうか。
「いまの自分の年収」を基準とするのも一つの方法ではある。ただし、それはいまあなたが所属しているたった一つの会社の数字でしかない。より客観的に自分の市場価値を測るための方法を紹介しておこう。
市場価値診断ツールを利用する
手軽に自分の市場価値を測定したいなら、市場価値を診断するツールを利用するのがいちばんだ。
いくつかの質問に答えることで、類似した人物の蓄積データから市場価値を診断・測定してくれる。会員登録なしですぐに回答することができ、さらに求人に応募できるサービスとしては「ミイダス」がある。
やや市場価値が高めに出る傾向は気になるものの、簡単に診断できること、さらに転職活動につなげることができるので、市場価値診断ツールとしては最もおすすめだ。もちろん利用するのにお金は一切かからない。
ミイダスの登録方法、実際の評判や口コミなどは次の記事でも詳しくまとめられている。
他にもdodaの「年収査定」でも、市場価値・年収の目安を調べることができる。
転職市場に身を置く
より正確に市場価値を測定したいのであれば、転職市場に身をおくことをおすすめしたい。
診断ツールは、あくまでもシミュレーションだ。あなたに類似した経歴を持つ人々のデータから算出しているもので、目安にはなるものの、その診断結果は保証されているものではない。
自分の市場価値をよりフラットに知りたいのであれば、転職エージェントに登録して、案内される求人情報をチェックしてみよう。
また転職エージェントの担当者に「どのようなスキルが不足しているのか」「どのような経験があれば、より評価されるのか」相談してみるのも有益だ。どこに伸びしろがあり、いま市場で何が求められているのか把握すれば、それを埋めにいく行動を取ることができる。具体的なメリットについては、次の記事を参照してほしい。
いますぐに転職しないとしても、うまく転職エージェントを活用することでより市場で評価されるきっかけを掴むことができる。
まとめ
定義もないまま、よく言及される「市場価値」は、それだけだとあまりに抽象的だ。
そのため、この記事では市場価値を構成するものは何か、それを5つの要素に分解して解説した。
また市場価値を上げることの具体的なメリットに触れ、現状の市場価値を測る手段を紹介した。市場価値を構成する要素と、いまの市場価値を知ることで、どのように市場価値を伸ばしていけばいいか戦略を立てることができるはずだ。
ぜひここで書かれている内容を咀嚼して、あなたのキャリア形成に役立ててほしい。
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