「どうしても給与を上げたい……」
「自分の努力や成果が、報酬に結びついている気がしない……」
「給与を上げるために有効な交渉方法が知りたい……」
自分の成果を給与というかたちで反映させてもらいたいと思うのは、当然のことだ。ただ会社としてはなるべく従業員の給与は低く抑えておきたいと考えるのも、また当たり前のことだ。
基本的に給与の決定権は、会社(経営陣)にある。
だから給与交渉を成功させ、給与アップを勝ち取るためには、会社の「できれば給与を上げたくない」という意向を超えて、「給与を上げたほうがいい」「給与を上げたほうが将来の会社のためになる」と納得してもらうことが必要不可欠となる。
ただ残念ながら、ほとんどの人間は給与交渉を有利に進めるための準備ができていない。どのように給与アップを申し出たのかをヒアリングしたことがあるが、「これでは給与を上げられるわけがない」というものばかりだった(実際、そういう人たちの給与は上がらないままだった)。
たとえば、あなたは給与を上げるための交渉で次のような言動を取ったことはないだろうか。
いまの給与では生活が苦しいことを滔々と訴える唐突に給与アップを願い出る
会社がどのように給与を決めているか知らないまま、直属の上長に給与交渉を持ちかける
以上のようなことは、給与交渉にとって害はあっても役に立たない。では、どうすれば給与を上げるための交渉テーブルに立てるのか。これを順序立てて解説していく。
この記事を読むことで、なぜあなたの給与交渉がうまくいかないのか理解することができるようになる。もちろん、給与交渉を成功させるために行うべきこともクリアになるはずだ。
ぜひここに書かれていることを実践して、給与アップにつなげてほしい。
この記事では、いまの職場で給与を上げるための交渉術を紹介する。しかし会社には給与アップの上限が暗黙的に置かれていることも多い。
役職がつくなど特別な事情がなければ、短期間に大幅に給与を上げるのはなかなか難しいのが現実だ。
その場合は、転職を検討するのも一つの方法だ。あなたの経験やスキルを求めている会社があれば、転職によって年収が50万円〜100万円、あるいはそれよりも大きく上がるのは決して珍しいことではない。すぐに給与を上げることだけを考えるのであれば、転職を視野に入れておくことが望ましい。
また本文でも触れるが、転職市場での自分の価値を把握しておくことは、そのまま現職での給与交渉のカードにもなる。
転職エージェントなどを利用して、自分の市場価値を把握しておくとともに、よりより仕事を普段から探すようにしておこう。
給与交渉を行うために必要な情報
まず給与交渉を行ううえで、必要となる情報がある。これがわかっていないと、無駄な回り道をすることになりかねない。
給与を決める実質的な人物は誰か
まずおさえておかなければならないのは、給与を決める(アップさせることができる)実質的な人物は誰なのか、だ。
中小企業ではオーナー社長が全面的にその権限を握っていることが多いし、人事評価制度が確立している会社は、マネージャークラスが一次評価を下すことが多いだろう。
ただ、それはあくまで「一般的にそうである」というだけで、会社によって事情は大きく異なる。
形式上そうなっているだけで、実質的にはより上の階層の人物が給与を決めているかもしれない。また、従業員の給与アップは経営陣レベルが承認を行うことがほとんどだ。
だから自分がアプローチできるなかで、最も給与を決める権限を持っている人間は誰で、給与交渉する相手は誰なのか前もって見定めておこう。
これは先輩社員などにそれとなく聞いてみるのがいちばん手っ取り早い。
給与改定はどのタイミングで行われるか
給与改定がどのタイミングで行われるか知っておくのも非常に重要になる。「いつでも給与が変わる」会社もあるかもしれないが、数としては多くはない。
会社の規則として給与改定の時期が決まっているのであれば、そのタイミング以外で給与交渉をしても意味がない。
給与改定の時期に交渉は行うべきだし、またそのタイミングに間に合うように交渉材料を用意しておく必要がある(詳しくは後ほど解説する)。
給与規程・人事制度の確認
給与規程、人事制度についても必ず把握しておくべきだ。
給与がどのように決まっているか、どうすれば昇進することができるのか、そしてその要件として何が定められているのか知っておかないと、努力の方向性が大きく間違うことにもつながりかねない。
とりわけ「何が評価される要件」として設定されているのかしっかりと頭に叩き込んでおくこと。
これが会社が求めていることであり、評価の対象となるのだから、ここに注力するのが給与交渉をうまく導くためのキーポイントとなる。
給与交渉が可能な社風かどうか
最後におさえておきたいポイントは、そもそも給与交渉が可能な組織風土や状況にあるのかという点だ。
- 人事制度はあるものの形骸化している
- 給与の決め方が不透明
- 周囲から昇給の話を聞かない
- 会社の業績が悪く、明らかに給与を上げられる余裕がない
上記のような状態であれば、現実的に給与交渉する余地がないこともある。どうすれば給与を上げられるのか探りを入れつつ、転職など社内での給与交渉以外の道を検討することが必要だ。
そもそも一回の昇給額は、会社によってその上限が暗黙で決められていることも多い。それを超えた大幅な給与アップはなかなか難しいのが現実だ。
同じ職場にとどまるよりは、転職を成功させるほうがずっとスピーディーに、そして大幅な給与アップが期待できることは知っておいたほうがいい。
年収アップのために転職まで視野に入れてるのであれば、まずは転職エージェントに登録しておくことをおすすめする。完全に無料で登録できるうえに、さまざまな求人案件を紹介してもらうことができる。
給与交渉を成功させるための準備
ここからは、給与交渉を成功させるための必要準備を詳しく解説していく。
明日からでも実行に移せるものも多いので、ぜひ実践していただきたい。
自分が望む給与水準に求められるスキル・成果を握る
最重要ポイントは、給与交渉を行う相手(評価権限、給与を決める権限を少なからず持っている人間)に「自分はいくらの給与を希望するのか、そしてそのためには何をしなければならないのか」握っておくことだ。
人事評価がある程度、確立している会社では等級制度とそれに応じた要件が決まっていることが多い。とはいえ、汎用性の高い運用を行うためその要件は抽象的な表現になっており、具体的な給与アップの指針として機能しないことも多い。
そのため、より具体的な条件を評価者と握っておくと評価されるためのアクションを取りやすい。逆にいうと、特に評価されない行動に過度な努力を向けてしまうというリスクを排除できる。
要件を決めるうえで、次のことを意識するとさらに行動が取りやすくなるだろう。
定量的であること
第三者が見ても達成したかどうか判断できること
たとえば「売上に貢献すること」では、ほとんど無意味だ。より具体的に「7月〜9月で30件の新規アポイントを獲得して、5件の受注する」など基準を明確化しよう。
また第三者が見ても達成したかどうか明確にわかることも意識しておきたい。これは評価者が変わったときも対応できること、また評価者の主観が過度に入らないようにするために必要な措置だ。
自分が身につけたスキル・成果を記録・共有する
給与アップの条件が一つであることは稀だ。また単純に「明確な成果」だけではなく、普段の行動、スキル、スタンスなども評価対象に入ることもある。
そのため資格の取得、身につけたスキル、どれだけ行動したかなども記録しておき、定期的に評価者に共有しておきたい。
評価者も被評価者も、評価直前の出来事をより大きく見積もる傾向がある。しかし普段からプラスの行動を積み上げているのであれば、細かく共有することでプラス評価・好印象を維持することができる。
目標以外の会社に貢献した点もあわせて記録する
こちらも給与アップのための条件以外の対策となる。
給与交渉のプラスとなりうる材料は、可能な限り用意しておくことに超したことはない。給与アップの理由は多ければ多いほどいい。
サポート業務、後輩の育成、会社行事の促進など、なかなか評価されづらいところもしっかり記録しておこう。どこまで普段から共有していくかは別として、交渉前には選別したうえで共有しておくと、プラスに働く。
自分の転職市場での市場価値を調査しておく
自分の転職市場での市場価値を調査、把握しておくことも重要だ。いまは「市場価値」を基準として、給与を決める会社も多い。
転職市場での年収オファーがいまの勤務先よりも高いことを示すことができるのであれば、より交渉はしやすくなるだろう。
それに社内での給与交渉が難しいようであれば、より魅力的なオファーがあればそこに乗り換えればいいだけの話だ。
その意味でも転職エージェントなど、転職市場での自分の価値を普段からチェックしておくことが望ましい。
確実に昇給を勝ち取るための給与交渉術
いよいよ交渉の段階まできた。
給与交渉を行う際に、何をすればいいのか見ていこう。
事前に握っておいた水準と、現実を照らし合わせる
すでに準備段階で「何を、どこまで行えば給与が上げられるのか」水準を設定していたはずだ。
ここでは握っていた水準と、実際どのような成果があったのかという現実を改めて照らし合わせるようにしよう。
達成できたのであれば、達成した旨を伝え、相手もそれに同意を示すかどうか確認しておこう。
ここでは強い言い方をすることなく、端的に事実とその解釈に相違がないか確認するにとどめるほうがいい。
成果を出せた理由を分析して、再現性をアピールするような言い方を行う
給与は一度アップしたら、そのアップしたあとの給与が新たな水準となる。
だから、自分が出した成果・行動が、今後も継続的に行える見込みが高いことをアピールしておこう。
なぜこのような成果を出せたのか、成果を出すためにどのような行動を取ったのか話すことで、今回出した成果とそのための行動が再現性があること、継続可能であることの納得感が生まれるだろう。
まだ残っている課題点は何があって、それをどのように解決していくか自分の考えもあわせて伝えれば、今後の見通しも評価者は理解しやすくなるはずだ。
次の給与アップのために必要なフィードバックを得る
ここまで、自分が出した成果と行動を正確に評価者に伝えるための方法を伝えてきた。
最後は、評価者の見解を深く理解することが必要だ。
給与交渉は継続的な営みである。フィードバックを得て、給与をさらに上げるためには何が必要なのか(給与が上がらなければ、何が不足していたのか)、課題点を認識しておこう。
このような積み重ねによって、継続的な給与アップを勝ち取ることができる。
これは止めとけ!給与交渉に関する注意点
最後に、給与交渉を行う際にしてはいけないこと、NG行為についても触れておこう。
給与アップの理由にプライベートを混ぜない
まず給与交渉の際に、プライベートな理由をつけないということが挙げられる。
「いまの給与では生活が苦しい」
「結婚を考えているが、いまの給与では難しい」
「親の介護にお金がかかるため、給与をあげてほしい」
これはあなたの私的な理由であり、残念ながら給与交渉のための材料にはならない。
事情をいくぶんか汲んでもらえることもあるかもしれないが、基本的にはプライベートな理由によって給与に差をつけるのは、他社員との不平等・不公正につながる。
給与交渉の材料は、あくまで「自分がどれだけ会社に貢献したか」「今後、どれだけ貢献できるか」が中心だ。
脅しを使う、対立を生む言い方をする
「給与を上げなければ辞める」など直接的な脅しを使うのも避けよう。
交渉をうまく進めるには、双方の同意が必要になる。無益な対立を生むような言い方はNGだ。
ただ「自分の市場価値を知るために転職エージェントに登録をしているが、より魅力的な待遇を提示されることがある。できればいまの会社で働きつづけたいが、他社から提案いただいている年収を考えると、転職も視野に入ってくるかもしれない」といった温和な言い方で交渉するのは選択肢には入る。
今後、同じ会社で働く可能性があるなら、人間関係をこじらせる可能性のある交渉のやり方は止めるべきだ。
給与が上がらないからといって批判・愚痴をいう
給与交渉がうまくいかなかったからといって、周囲の人間に批判・愚痴をこぼすのも止めよう。
そのような批判・愚痴を言ったからといって、状況は何も好転することはない。またどこからかあなたが愚痴を言っていたことが漏れると、単に印象が悪くなるだけだ。
給与を上げるために何をすべきか明確にして行動に移す、あるいは会社に見切りをつけて、より待遇の良い会社への転職を検討することに注力しよう。
まとめ
社内で給与交渉を通して、給与を上げるための方法を解説してきた。
「査定・評価は被評価者の「納得感」が重要だ」とよくいわれるが、それは評価者も同様だ。
あなたの給与を上げる合理的な理由があれば、評価者も納得することができるし、給与アップの理由の説明を求められても対応できる。
給与を上げるための具体的な材料については自分で準備して、揃え、わかりやすく伝えておくことが重要だ。
給与交渉を成功させるための方法について解説してきたので、参考にして給与アップを実現させてほしい。